飛べない人間は飛びたいと願う

大空に憧れて

子供も 大人も

手を 伸ばす

届かないから憧れる

欲する

焦がれる

そしていつか

絶望する




光は闇を欲して

闇は光を欲して

けれど近づくことは出来なくて

光は天使になる

闇は悪魔になる








「ちょっとした違いなんだと思うの」

掠れた声で、彼女は言った。

「私が天使であの人が悪魔だということは、本当にちょっとした違いなのよ」

俺はなにも言わない。

「でもそれは永遠に一つになることはない」

声は小さくなっていく。

「天使は光で、悪魔は闇。お互いを欲してはいけない。焦がれてはいけない。手も、伸ばしてはいけない」

彼女の息遣いは弱くなっていくだけだ。ゆっくりと、でも、確実に。

「でも、私は闇を夢見た。憧れた。欲した。手も伸ばしたの」

だって、と彼女は微かに笑う。

「とても・・・とても綺麗だったから。光は闇がなくては存在できない。闇にも光が必要なように」

ふう、と彼女は大きく息をついた。

「闇にはなれないと知っても、手を伸ばしてしまった。あの人も・・・きっと、そう。悪魔は光にはなれない」

俺はただ聞くことしかしない。・・・伝えなくてはいけないから。あいつに。

「天使と悪魔が手を取って・・・一人は死に、一人は狂う。それでも欲せずにはいられないのよ。お互いが美しいから」

にこりと彼女は笑んで、目を閉じた。

「触れただけでこんなに・・・幸せだったのよ」





悪魔は天使に触れたいと願う

光に憧れて

手を 伸ばす

届かないから憧れる

欲する 

焦がれる

そしていつか

絶望する





天使は悪魔に触れたいと願う

闇に憧れて

手を 伸ばす

届かないから憧れる

欲する

焦がれる

そしていつか

絶望する





絶望して

手が触れ合ったなら

それは きっと

喜びになって

狂気になる





「それはきっと、とても美しい」











一姫さんの創作小説「縛められて闇を夢見た」でした!
お題の出典は、荻原規子さんの小説「空色勾玉」の帯コピーの一部なのだそうです。
とにかく一途で切ないお話で、暗い暗いストーリーのはずなのに、読んでいると、心が澄み切っていくようです。 禁忌に触れて、滅んでゆく身を、それでも幸せだと言い放つ天使が本当に美しいと思いました。
「触れただけでこんなに・・・幸せだったのよ」
という台詞に感動の鳥肌が立ちます!
お互いの手に触れる、というだけのことに、この二人は何年も何年もかかったんじゃないかしらと思うと…。そして触れた瞬間に、全部終わってしまうと分かっていても、そうしなくてはいられなかった二人の心理を思うと…。

シンとした空気がとても綺麗でした。一姫さん、ありがとうございました!
(03/10/26)


↑一姫さんのサイト。
十二国記、ゴーストハント等の小説サイト。

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